
知っておきたい文章作法|ビジネスにおける「時候の挨拶」
顧客や取引先との連絡には、ビジネス文書(手紙やメールなど)が欠かせません。ビジネス文書には、正しい礼儀作法が存在します。この記事では、ビジネスにおける文章作法の一つである「時候の挨拶」について解説します。
目次
時候の挨拶とは
時候の挨拶とは、礼節を重んじる文章の冒頭に用いる挨拶です。時候とは、四季折々の気候や天候を指します。
時候の挨拶では、季節感を表現した挨拶をしたためることが礼儀とされています。「漢語調」と「口語調」の2種類が存在し、用途に合わせて使い分けることが一般的です。
漢語調の挨拶
礼儀や礼節を重んじる際に使用する表現方法です。主に儀礼を重んじるビジネスシーンで使用しますが、他人行儀な印象も与えるため、相手によって表現を考えることが大切です。
漢語調の時候の挨拶では、季節を表す表現の後に「の候」を付けます。例えば12月なら「師走の候」「寒冷の候」など。
口語調の挨拶
会話言葉のような砕けた表現方法です。主に個人間のやりとりに使用しますが、親しい取引先とのやり取りで使われることもあります。
厳密に決まった文言はないため、自分で感じたことを入れると気持ちが伝わりやすくなります。例えば12月なら「師走のあわただしい季節になりましたが」など。
代表的な時候の挨拶
時候の挨拶は、二十四節気(一年を24等分し、それぞれに季節を表す名称が付けられた旧暦)に基づき制定されています。
代表的な時候の挨拶をまとめました。
季節 | 代表的な時候の挨拶(漢語調) |
1月 | 初春の候、新春の候、小寒の候 |
2月 | 早春の候、梅花の候、節分の候 |
3月 | 浅春の候、早春の候、麗日の候 |
4月 | 陽春の候、春日の候、穀雨の候 |
5月 | 新緑の候、若葉の候、立夏の候 |
6月 | 青葉の候、入梅の候、梅雨の候 |
7月 | 猛暑の候、大暑の候、酷暑の候 |
8月 | 晩夏の候、残暑の候、立秋の候 |
9月 | 初秋の候、秋色の候、秋分の候 |
10月 | 紅葉の候、秋雨の候、秋晴れの候 |
11月 | 晩秋の候、落葉の候、立冬の候 |
12月 | 師走の候、初冬の候、寒冷の候 |
文中に時候の挨拶を書く位置
ビジネス文書には基本構造があります。
- 頭語:手紙の冒頭に記す言葉
- 時候の挨拶:季節に合わせた挨拶
- 先方の繁栄・活躍を喜ぶ挨拶
- 日頃の感謝の挨拶
- 本題
- 結びの挨拶:まとめ
- 結語:手紙の終わりに記す言葉
時候の挨拶は「拝啓」「謹啓」などの頭語の直後に書きます。
【例】
拝啓
早春の候、いかがお過ごしでしょうか。貴社におかれましては、なお一層ご隆昌のこととお喜び申し上げます。
時候の挨拶が必要な手紙の内容
漢語調を用いた時候の挨拶は、様々な場面で使用します。代表的な事例をご紹介します。
季節の挨拶状
次のような季節の挨拶状には、時候の挨拶が必須です。
- 年賀状
- 寒中見舞い
- 余寒見舞い
- 暑中見舞い
- 残暑見舞い
- 喪中欠礼
喪中の連絡の際には入れないのが一般的ですが、加えてもマナー違反ではありません。
招待状・案内状
新会社の設立や社屋の建設、株主総会への案内など、社外へのお知らせの文書には時候の挨拶を含めます。
初めて連絡を取る相手
仕事で初めて連絡を取る相手に対しては、時候の挨拶を含めた丁寧な文章が必要になります。
一斉通知
転勤や部署異動、就任、退職など、環境が変わる際に送る社内文書にも時候の挨拶を加える場合があります。
時候の挨拶を省いた方が良い場面
時候の挨拶を省くべき場面もあります。
お詫びをする場面
お詫びの手紙では、何よりも詫びる気持ちを伝えることが大切です。時候の挨拶は省いて、頭語のあとにすぐお詫びの言葉を始めます。頭語も省く場合もあります。
お見舞いをする場面
お見舞いの手紙もお詫びをするとき同様、目上の相手であっても時候の挨拶は不要です。前置きは省いて、事情を知っての驚きと相手を思いやり、回復を祈ることばを書き添えましょう。
ビジネスメールに時候の挨拶は必要か?
ビジネスメールの場合、基本的に時候の挨拶は必要ありません。
メールの良さは「スピード」と「わかりやすさ」なので、メールの文章を作る場合は、どれだけ簡潔に相手に内容を伝えるかが大切になります。
時候の挨拶を入れることで、受信ボックスなどで本文を表示したときに本題まで表示されなくなってしまうかもしれません。もちろん礼節は必要ですが「手紙は丁寧に」「メールは簡潔に」と心得ましょう。
久しぶりに連絡を取る場合や初めて連絡を取る場合、節目のご挨拶のメールなど、必要かも?と思ったら、時候の挨拶を含めてもマナー違反にはなりません。
まとめ
礼儀作法やしきたりを重んじる日本には、文書の中にも多くの作法が存在します。中でも季節によって使い分ける時候の挨拶は、代表的な例といえるでしょう。ビジネス文書を送る際には、正しい作法に準じた表現を心がけましょう。